こんな時にはこんな法人 ~法人で事業を行う場合、どんな法人を選択したらよいのでしょう?~

 新聞等の「新設法人情報」で、①社名、②所在地、③設立日、④資本金、⑤目的が掲載されているのを見たことはありませんか。法人を設立すると一般に公表される機会が増えてきます。

 そこで、最近多い「株式会社」、「合同会社」、「特定非営利活動法人(NPO法人)」、「一般社団(財団)法人」の法人の特徴等をみていきます。


1.法人の分類

法人の種類を「営利法人」又は「非営利法人」に分類すると次のようになります。

  営利法人 非営利法人
法人の種類

◆会社法に基づく法人

株式会社、合名会社、合資会社、合同会社

◆一般法人法及び公益法人認定法(※)に基づく法人

一般社団法人→【公益認定】→公益社団法人

一般財団法人→【公益認定】→公益財団法人

 

◆特別法に基づく法人

特定非営利活動法人(NPO法人)、学校法人、宗教法人、医療法人など

事業目的

 利益を得ることを主な目的として事業を行います。

利益は会社の株主に還元したり、役員や従業員に配分することができるので、仕事に対する意欲を引き出すことにつながります。

 社会貢献を主な目的としている(世のため人のためになる)事業を行います。

事業収益は、その事業のために使うよう使途が制限されています。ただ、その分税制面での優遇を受けています。

(※)「一般法人法」は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の、「公益法人認定法」は「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の略称です。

2.「株式会社」「合同会社」の特徴

「株式会社」は、知名度が高く、信用度も高いというところで選択されるケースが多いかと思います。ただ、事業開始時は小さい規模で費用負担を抑えたい場合は、「合同会社」を選択し、事業規模が大きくなったときに株式会社に移行する方法もあります。

  株式会社 合同会社
設立費用

登録免許税:15万円

定款認証手数料:約5万2千円

登録免許税:6万円

定款認証手数料:0円

有限責任性 有限責任 有限責任
利益配分 出資金額比率で分配

原則、出資金額比率によるが、貢献度合い等、

自由に分配可能

持分の譲渡 譲渡制限会社の場合、承認が必要       他の社員の全員の同意が必要
意思決定 決定事案ごとの株主の議決権数による 全社員の同意による
業務執行 取締役が行う

各社員が原則として業務執行権限を有する。

定款で一部の社員を業務執行社員と定めることも可能

権限 一株1票 自由

機関

(取締役・監査役等)

機関の設置が必要

(最低限、取締役が必要) 

機関の設置が不要 

運営上の違いを具体的に説明します。

例えば、お金はあまりないが、技術やノウハウを持っているAさんと、お金はあるが、技術やノウハウは持っていないBさんが共同で、「1000万円 必要な事業」を始めることとします。資本金を1000万円とし、Aさんは100万円出資し、Bさんは残りの900万円を出資しました。

そして、Aさんの頑張りもあり、この事業で、2000万円の利益が出ました。

<株式会社だった場合>

利益の配分は出資した金額の割合によって決まることになります。

AさんとBさんの出資した割合は1:9ですので、利益の配分も1:9になります。

Aさんは200万円しか受け取れないにもかかわらず、Bさんは1800万円受け取る事になります。

また、事業の方向性を決める意思決定においても、株主としての議決権は出資金額に応じて配分されていますので、ほとんどBさんが決定することになってしまいます。

<合同会社だった場合>

株式会社と異なり、利益の配分を内部で自由に決めることができます。

Aさんはノウハウを、Bさんはお金を出資するのだから、 利益が上がった場合折半にするということもできます。

そのように取り決めた場合、利益の2000万円は1000万円ずつ分けるということになります。

また、事業の方向性を決める意思決定についても、事前に取り決めておくことができます。

 


合同会社は、比較的少人数で、技術やノウハウを持ち寄って共同で事業を始める場合に適した法人と言えるでしょう。

3.「一般社団(財団)法人」、「特定非営利活動法人(NPO法人)」の特徴

  一般社団法人 NPO法人
設立運営等

・設立登記で簡便に設立可能。

・設立時は社員2名以上必要。

・余剰金の分配を目的とすることは不可。

・設立は、易しい(1ケ月以内で設立可能)。

・事業目的追加等が起きても内部手続きと変更登記でスムーズに事業拡大ができる。

・設立登記の前に所轄庁の認証を受ける必要がある。

・設立時は社員10名以上が必要。

・余剰金の分配を目的とすることは不可。

・所轄庁の認証を受けるために必要な要件を満たさなければならない(4ケ月程度はかかる)。

・事業目的追加等が発生した場合、所轄庁の認証を受けてから変更登記をする必要があり、3ケ月以上かかるため機動的に事業を進められない。

機関

・社員総会及び理事は必置。

・理事は社団で1人以上必要。

・理事会、監事の設置任意。

・理事会設置なら理事は3人以上必要。

・社員総会、理事会は必置。

・理事は3人以上、監事は1人以上必置。

収益事業等

・事業に制限はなく、特段の規制・制約はない。

(町内会、同窓会、サークル等の共益事業、又は99%収益事業も可、但し、余剰金の分配は不可)

・特定非営利活動を主たる目的とすること。

・剰余金の分配は不可。

・収益事業を行うことはできるが、収益が生じた場合は、特定非営利活動のために使用しなければならない。

行政指導

・主務官庁がなく、行政庁が一律に監督することはない。

・法人の自主的、自立的運営が必要。

・所轄庁から報告を求められたり、検査を受けたり、改善の命令を受けたり、設立の認証を取消されることがある。
税制上の優遇

・営利性が徹底した法人、共益的活動目的の法人は、収益事業のみ課税。

・それ以外の法人は普通課税。

・登記手続きの際、登録免許税(設立時は6万円)が課税される。

・特定非営利活動であっても税制上の収益事業に該当する場合は、課税の対象になる。

・法人県民税均等割の減免を受けることができる場合がある。

・登記手続きの際、登録免許税は非課税になる。

その他

・収益事業に関する規制がないため、会費以外の収入の手段が確保できる。

・法人活動として公益事業の実施は自由。

・事業年度ごとの計算書類、事業報告等の作成、貸借対照表の公告が必要。 

・事業内容によっては、収入の確保に苦慮する場合がある。

・決算終了後、所轄庁に事業報告書、活動計算書等を提出しなければならない。また、その書類は、一般に情報公開される。 

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